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機械式腕時計の精度に過度な期待をしてはいけない

機械式腕時計の精度はぜんまいばねを動力源として機械的に振動する「てんぷ」を始めとした各パーツの工作精度、さらに組み込み時の調整などによって決まりますが、非常に精度が高い機械式腕時計であることを示すスイスクロノメーター検定協会(Contrôle Officiel Suisse des Chronomètres / C.O.S.C.)による「クロノメーター」認定を受けたものでも平均日差が「-4~+6秒」(ムーブメントの直径によって異なる)、ロレックスが自社で独自に定めている「Superlative Chronometer(高精度クロノメーター)」でも平均日差「(+/-)2秒」です。

つまりどんなに高精度をうたっている機械式腕時計でも、1日稼働させれば2~6秒程度はずれるということです。しかもこの数値は所定の日差測定方法に基づいて計測された数値であり、実際に人間の腕に巻いて使われるのとは状況が異なります。ぜんまいばねの巻き上げ状態や、使用している間の腕時計の姿勢、環境などによって数値は変化しますし、実用上はもう少し精度が落ちるのが通常です。

それでも個人的には機械式腕時計でこのレベルの精度を保つこと自体、素晴らしいことだと思いますが、一方でクォーツ式時計のムーブメントは、ごく一般的なもの、つまりどこでも買えるような安物でも平均月差「(+/-)20秒」程度。機械式腕時計は電気で動くクォーツ式時計のように置いておくだけで1ヶ月間動き続けることはないのであくまで単純計算ですが、平均日差「(+/-)2秒」の機械式腕時計を月差に換算すると「(+/-)60秒」を超えます。

数十万円~数百万円する高級機械式腕時計、しかも高精度を売りにしているような商品でさえ、単純な精度では数千円のクォーツ式腕時計に全く歯が立ちません。

ですから、「この機械式腕時計、高かったのに1日に何秒もずれるんだよ」などという不満は、クォーツ式腕時計を基準にすれば文句を言いたくなるのもわかりますが、実際にはナンセンスです。それは仕組み上当たり前のことであり、そもそも機械式腕時計の価値はクォーツ式腕時計と比べた精度などで語るものではないのです。

精度だけが重要ならクォーツ式腕時計を購入しましょう。電波時計機能を搭載したものであれば、月差どころか年差で語られるレベルで精度が高いです。機械式腕時計には毎朝時刻を合わせる作業を楽しむくらいの余裕が必要です。

ちなみに「機械式ながらクォーツの精度」という選択肢として、セイコー社のスプリングドライブのようなハイブリッドムーブメントも存在します。下記のコラムで書いていますので参考までにどうぞ。

※ 日に数十秒も時間が進む、遅れるということであれば、経年によってオーバーホールの時期が近づいている、あるいは腕時計が何らかの理由で帯磁(磁気を帯びて)してしまって精度が出ていない可能性がありますので、メーカーや専門店に相談してみることをお勧めします。また、落としたりぶつけたなど、機械式腕時計に強めの衝撃を加えてしまったあとで精度が出なくなったような場合も一度チェックしてもらいましょう。

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