Frequency Feeling... - 機械式腕時計のファンブログ

「機械式クォーツ」という発想

このブログは「機械式腕時計」のファンブログですので、基本的にはクォーツ式腕時計の話題を扱うことはあまりないのですが、とはいえ「クォーツ式腕時計なんて価値がない」などという考えではありません。精度や取り扱いの容易さというクォーツ式腕時計の利点を理解し、用途によって使い分ければよいと思っていますし、実際に私も普段使い用にクォーツ式腕時計はいくつか持っています(もっぱら「G-Shock」ですが)。

ところでよく言われる「機械式腕時計」か「クォーツ式腕時計」かという二択以外にも選択肢があることをご存じでしょうか。今回はそんな機械式腕時計とクォーツ式腕時計の融合とも言える特殊なムーブメントについて触れてみたいと思います。

さて、このブログでよく名前が挙がるような機械式腕時計の海外有名ブランドも、クォーツ式ムーブメント搭載モデルを過去展開していたり、あるいは現在もラインナップに含めているケースは多々あります。

「高級腕時計」と「クォーツ式腕時計」というとなんだか全く関係ない気もしますが、実は60年代~70年代にかけてはスイスの老舗メーカーも含めクォーツ式腕時計の開発は盛んでした。また、クォーツ式ムーブメントは当時、新たな高精度腕時計の仕組みとして最先端技術であり、早くからその開発を進めていたスイスの老舗メーカーはその技術においても進んでいました。

ところが、当時は「量産が難しく、今までの機械式腕時計に比べて驚くほど高精度」ということもあって高級品として販売されていたクォーツ式腕時計を、日本のセイコー社が世界に先駆けて量産化に成功。その後、クォーツ式腕時計の生産効率が飛躍的に向上したことで、新たに台頭した香港製の安価なデジタル式腕時計が市場を席巻し(所謂、クォーツショック)、それによってクォーツ式腕時計は一気に安価な腕時計の代表のようになってしまいます。皮肉なことにクォーツ式腕時計の量産化に成功した当の日本メーカーですら、安売り競争に負けて厳しい状況に追い込まれる有様。

一方でクォーツショックや同時期に起こったスイスフランの高騰などによって瀕死の状況まで追い込まれたスイスの腕時計産業も、デザイン性や機能に的を絞った機械式腕時計によって、高精度を売りにするクォーツ式腕時計との差別化を進めると、その後の機械式腕時計の再評価によって「高級腕時計市場」という新たな市場を開拓したことで、80年代以降は見事に復権します。

しかし、結果としてスイスの老舗ブランドにとってクォーツ式腕時計の重要性はほぼ皆無となり、結局クオーツ式腕時計をラインナップから消していったブランドもあれば、その取り扱いの容易さや高精度を活かせる一部のシリーズにのみ残しているブランドもありといった感じで現在に至っています。

例えばオメガ(Omega)は「シーマスター アクアテラ クォーツ(Seamaster Aqua Terra 150M Quartz 38.5mm」という、自社開発のクォーツムーブメント「キャリバー4564」を搭載したクォーツモデルを展開していますし、パテックフィリップ(Patek Philippe)のような超高級機械式腕時計しか作らなそうなイメージのブランドにもクォーツムーブメントのラインナップ(キャリバー E23-250など)が存在します(現在はレディースモデルのみで使用されていますが)。

そんな中で、クォーツ式腕時計と機械式腕時計のよいところを組み合わせた、所謂ハイブリッドなムーブメントを1998年に発表し、今でも開発を続けているのが日本のセイコー社です。

「スプリングドライブ」と呼ばれるこの仕組みは、機械式腕時計同様にぜんまいばねの力で駆動しますが、一般的な機械式腕時計ではてんぷやアンクル脱進機によって構成される脱進・調速機構が、水晶振動子と集積回路を用いて制御する磁力ブレーキからなる調速機構(これをセイコー社では「Tri-Synchro Regulator(トライ・シンクロ・レギュレーター)」と呼んでいます)に置き換えられています。磁力ブレーキが正確に歯車の回転を制御することで、機械式腕時計ながら月差(+/-)10~15秒という高精度を誇ります。

この電気式調速機構の動作に必要な電力は、駆動用ぜんまいばねの力を利用して腕時計内で発電しますので電池を使用しません。機械式腕時計と同様に竜頭によるぜんまいばねの巻き上げや、自動巻き上げによって動作するため、パワーリザーブは機械式腕時計と同じ。つまりぜんまいばねがほどけきると時計は止まります(現在最新の「キャリバー 9R01」でパワーリザーブは約8日間/192時間)。

セイコーの高級腕時計ブランドである「グランドセイコー(Grand Seiko)」にのみ搭載されるムーブメントですが、機械式腕時計におけるクラフトマンシップを尊重しながら、最先端のテクノロジーを融合させて精度を追求するという日本メーカーならではのこだわりと、差別化戦略が生んだムーブメントといえるでしょう。

なお、ジュネーブサロン 2016(S.I.H.H.2016)でピアジェ(Piaget)が発表した「キャリバー 700P」もスプリングドライブ同様のハイブリッドムーブメントです。ピアジェ初のクォーツムーブメントとなった「7P」の誕生から40周年を記念して発表された最新のムーブメントで、このムーブメントを搭載した「ピアジェ エンペラドール・クッション 700P」が世界限定118本で6月に発売される予定です(参考記事)。

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