Frequency Feeling... - 機械式腕時計のファンブログ

機械式腕時計の適切なオーバーホール頻度はどの程度なのかを考える

この記事は「腕時計 Advent Calendar 2016」第13日目の記事です。

機械式腕時計を趣味にしていると避けては通れないのが「オーバーホール」、つまり定期的な機械の分解、清掃、再調整です。実際にはクォーツムーブメントでもオーバーホールと無縁なわけではないのですが、今回は機械式腕時計のオーバーホールに限定して、その適切な頻度・周期ってどのくらいなんだろうというのを考えてみたいと思います。

結論を言ってしまえば個人の気持ちと財力次第

身もふたもない感じで先に結論を言ってしまえば、オーバーホールをどの程度の頻度で行うかは、オーナーさんの腕時計に対する気持ち、考え方と財力次第で大きく変わってきます。

機械式腕時計のオーバーホールにかかる費用は、ブランドやモデル、ムーブメントの種別、メーカー正規のオーバーホールサービスを利用するか、腕時計修理専門店に依頼するかなど、様々な条件によって変わりますが、1本当たり安くて 2、3万円程度から、一般的な有名ブランドで5~8万円程度が相場。超高級ブランドの正規オーバーホールで10~15万円程度までというのが概ねの範囲だと思います。

あとはそれに、その人が所有している腕時計の本数が関係してきます。例えばロレックスやオメガを計3本程度所有していて、もしそれらすべてをオーバーホールに出した場合、全部で15万円~20万円程度の費用がかかることになります。

もし3年に1度のオーバーホールを行うとすれば、年間に平均した腕時計の維持費は5万円~7万円程度という計算になりますが、これを高いと感じるか、大したことないと感じるかは人によって異なると思います。

オーバーホール頻度は年間にかけられる維持費で考えてみる

そこで、自分が腕時計の「維持費」として、年間どのくらいまでならかけられるかを考えて、それによって大まかなオーバーホール周期を計算してみると良いと思います。「機械にとってどの程度の頻度が適切か」という視点ではなく、「自分のお財布にとってどの程度の頻度が適切か」という視点で考えてみるということですね。無理のない範囲で楽しむのが、長く趣味を楽しむコツですから。

先ほど例としてあげたように、もしあなたが3本の機械式腕時計を所有していたとすると、1回あたりのオーバーホール総額は15万円~20万円程度になります。ここでは計算しやすいように20万円としておきましょう。

これをもし3年周期で割ると、年間の維持費が7万円程度になるというのは先に触れたとおりです。

この金額が「痛いな」と思うのであれば、周期を4年にしてみましょう。すると年間の維持費は5万円まで下がります。さらに5年ごとでいいやとしてみると、年間の維持費は4万円です。このくらいなら大事なコレクションの維持費にかけてもいいと思えますか?

もしそうであれば、3本それぞれのオーバーホール時期が同時でなくても、年間4万円ずつオーバーホール貯金をしていればオーバーホール費用の捻出は可能ということになりますね。

所有しているコレクションの数が多いのであれば、例えば「頻繁に使うので3年周期組」と「あまり使わないから7年周期でいいや組」のように分けて年間維持費を出してみるといいかもしれません。

この、年間に維持費として払ってもよいと思える額は、その人の腕時計に対する考え方とも関係してきます。コンディション維持のためなら維持費はかかってもよいという方もいれば、壊れない程度にメンテナンスできればいいよという方もいると思いますし、どちらが良いとか悪いとかいう話ではありません。

メーカーの推奨するオーバーホール頻度は過剰か

腕時計メーカーは、概ね3年程度をオーバーホールの周期として勧めてくるケースが多いようです。全ブランドを確認しているわけではありませんので、もっと頻繁にした方がよいというブランドや、その逆のブランドもあるとは思いますが。

ただし、車などでもそうですが、販売する側は、短い周期でのメンテナンスを進めるのが普通です。車のエンジンオイルも、よく3,000km、3~6ヶ月程度で交換しましょうなどと、ディーラーや整備工場の人は言いますが、実際にはそんな頻繁に交換しなくても、ごく普通の自家用車であれば問題になることはありません。年間に1万キロ、2万キロと走るような人でない限り、1年に1回程度、点検と同時に交換するくらいが普通ではないでしょうか。

腕時計も同様で、近年発売されている最新のムーブメントであれば、余程激しい使い方をしない限り、3年程度でオーバーホールが必要なほどはくたびれません。

マーケティングの観点からは、顧客との接触機会を増やすことが重要ですし、オーバーホールでブティックに腕時計を持ち込んでもらえれば、その際に新製品の案内をしたりといったこともできますから、メーカー側としては無理のない範囲で、なるべく頻繁にオーバーホールしてもらう方が理にかなっています。

ですから、あまりメーカーの推奨オーバーホール周期を、厳密に真に受ける必要はありません。自分なりに、どのようにコレクションのメンテナンスを考えるのか、という点を優先した方がよいと思います。もちろん、「頻繁にプールで腕時計を付けたまま泳ぐぜ」とか、「ほぼ毎日付けっぱなしでクロノグラフなどをガンガン使い倒すぜ」みたいな極端な方は3年と言わず、1、2年でオーバーホールした方が良いと思いますけども。

オーバーホールは頻繁に行えば良いというものでもない

オーバーホールは、頻繁に行えば行うほど、機械のコンディションは保てると考えがちですが、一方で別の部分でのリスクもあります。例えばオーバーホール時には短くても3週間程度、長い場合は1~2ヶ月間、腕時計をメーカーなりに預ける必要があります。その際、ブレスレット・ストラップを外したり、ケースを開けたりと、腕時計に他人の手が触れ、工具がコンタクトするわけです。

その頻度が高くなれば、作業中に事故が起こる可能性も高まります(もちろん、オーバーホールをされる技師の方々は皆さん高い技術を持っていらっしゃるので、可能性は低いですが)。ブレスレットを外す際にケースにキズを付けられるとか、裏蓋にキズが付いたなんてことは、メーカー正規の窓口を通したオーバーホールであっても可能性はゼロではありません。

また、オーバーホールの度にケース研磨をされる場合もあり、研磨によるケース痩せを気にする人にとっては気になるところです。もちろん「研磨しないでください」と事前に伝えておけばそれに従ってくれるメーカーがほとんどだとは思いますが、よく考えずにとにかく頻繁にオーバーホールしておけばいいんだろという考え方は、大切なコレクションにとって逆効果になることもありますよということです。

腕時計の年代や使用年数によっても最適な周期は変わる

最新の機械式腕時計を新品で購入したのであれば、最初の5年、6年はオーバーホールなしで使用してもほぼ問題ないと思いますが、1度目のオーバーホールを終えて、7年目、8年目、さらに10年、15年と長く使ってきた腕時計であれば、交換していないパーツの経年劣化によって、初回の時よりもオーバーホール周期を短くしてあげないとコンディションが保てなくなる可能性が高いです。

長く機械式腕時計を愛用していると、毎回使うときにリューズを巻いた感触で、ちょっと重くなってきたなとか、なんとなく変化を感じ取れるようになります。大切なコレクションを末永く、良いコンディションで愛用するためには、単に頻繁にオーバーホールすればよいという考えだけではなく、愛機のコンディションを感じ取る気持ちも重要だったりしますね。

機械や素材の進化によるオーバーホール頻度の変化も

近年は機械自体や素材の進化によってオーバーホールの周期が伸びているのも事実ですね。

例えばオメガのコーアクシャル脱進機などはその仕組み上、オーバーホールの頻度を減らせるメリットがありますし(とはいっても他の部品があるのでメンテナンスフリーとはいきませんが)、新素材の投入等によって、今後はオーバーホールなしで稼働可能な期間が飛躍的に伸びていく可能性もありますから、この「オーバーホール頻度」問題も、時代が進むにつれて「適切な頻度」というものがどんどん変化していくのかもしれません。

余談 - 機械式腕時計は動かした方がよいのか、動かさない方がよいのか

私、ウオッチコーディネーターという資格を取るにあたって、現役の時計技師(時計修理技能士)の方の講義を受けましたけど、その際に、機械式腕時計って、動かさないで保管しておいた方が劣化しないのか、それともたまには動かさないと痛んでしまうのかという点についてお話を聞いたことがあります。

その時の話では、「3ヶ月に1回くらいはゼンマイを巻いて動かしてあげた方がよい」というのが時計技師さんの結論。やはり、あまりに長時間動かさないでおいておくと、軸受けのオイルが流れてしまったり、硬化してしまって動かした際にパーツを傷める原因になる可能性があるとのこと。

だからといって、ワインディングマシーン(自動巻き機械式腕時計のゼンマイを、腕に装着せずに巻き上げるための装置)に入れっぱなしで常に稼働というのは、さすがに機械の負荷が大きいのでやり過ぎともおっしゃっていた記憶があります。

ちなみに、時計技師の方が勧める、オーバーホールの頻度は、確か「3年に1回」でした。時計技師の方は、依頼されるオーバーホールなどでご飯を食べているわけですので、多少ポジショントーク的な部分はあるとは思いますが、やはりオーバーホールの頻度としては、短くて3年程度というのがひとつの基準になるかもしれません。

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